子宮内膜症
子宮内膜症は子宮内膜やそれに似た組織が、本来あるべき部位(子宮の内側)以外の部位に発生して、増殖する病気です。女性ホルモンの影響を受け月経周期に合わせて増殖や剥離を繰り返し、病状が進むと激しい月経痛がおこります。また不妊との関係も指摘されています。 最近、子宮内膜症が増えてきたと言われています。その理由として、患者さん自身の関心が高まったことや診断技術の進歩により、受診率や発見される件数が増えているためともいわれていますが、晩婚化・少子化・初経年齢の若年化などにより一人の女性の経験する月経回数が増加していることも一因になっていると考えられています。
できやすい場所
最も多く見られるのは骨盤の中に納まっている臓器で、特に「子宮漿膜面(しきゅうしょうまくめん)」「卵巣」「仙骨子宮靭帯(せんこつしきゅうじんたい)」「ダグラス窩(か)(子宮の後側のくぼみ)」などに多く発生します。そのような場所では通常の月経のように月経血が排出されないでその場にとどまっています。その状態が長く続くと周辺の組織との癒着(ゆちゃく:炎症などが長期間続いたままだと、普通はくっついていない部位がくっついてしまう)をおこします。
なりやすい人
「やせ型」「胃腸下垂型」の人に多く、遺伝的な要素もあると言われています。また、一般的に20〜35歳くらいの人がなりやすいと言われていますが、ティーンエイジャーでもかなりの頻度でみられます。
症状
「月経痛」「骨盤痛(月経時以外の下腹部や腰の痛み)」「不妊」が子宮内膜症の3大症状です。周辺臓器との癒着(ゆちゃく)が進むと、臓器同士がひきつった不自然な状態になり、臓器の動きも悪くなるので、下腹部痛や性交痛の原因になります。また、不妊と子宮内膜症は統計的に密接な関係があると考えられるものの、その因果関係は明確には分かっていません。
診断方法
問診 あらかじめ問診表を書くシステムをとっているところが多いようですが、お医者さんの質問にはできるだけ具体的に分かりやすく答えましょう。よく質問されることはほぼ決まっていますので、前もって準備して行くと良いでしょう。(心構え参照)
外診 外陰部を診察して、炎症がないかなどを確認します。
腟鏡診 「腟鏡(ちつきょう)」という器具を腟内に入れ、お医者さんが腟の中や子宮の入り口などを直接みて、出血の有無や分泌物の状態を知ることができる検査です。
細胞診 腟鏡診の際に綿棒で子宮頸部の表面をこすって細胞をとり、ガンの心配がないかも調べます。10秒ほどで終わりますし、痛みはありません。
直腸診 お医者さんが手術用手袋をつけて、人差し指、または中指を肛門から直腸の中に 挿入します。患者さんが未婚、あるいは若い方のときは内診のかわりに直腸診をすることもありますし、病状によっては内診よりも直腸診の方が、より内膜症の状況を把握できることもあります。
内診 お医者さんが手術用手袋をつけて、人差し指、または人差し指と中指を腟内に入れもう片方の手はお腹の上に置き、診察します。これで子宮の大きさや形、表面の状態や硬さなどを調べることができます。また周囲との癒着(ゆちゃく:炎症などが長期間続いたままだと、普通はくっついていない部位がくっついてしまう)を起こしていないかを知ることもできます。
超音波検査
 (エコー)
超音波を出す「プローブ」という器具をおなかの表面にあてて、 子宮や卵巣などの内臓にあたってはね返ってきた音波をモニターで画像として映し出します。また、経腟エコーといって、細くて長いプローブを腟の中に入れて、中から超音波をあてて見ることもあります。
血液検査 ホルモンのバランスや貧血の有無を調べます。
MRI、CT どちらも身体の断層の写真を撮ることができるのですが、MRIはCTよりもか なり精密な画像が得られます。この検査で筋腫や嚢胞(のうほう:液状成分の入った袋状の腫瘤)の中の状態も分かります。
腹腔鏡検査 特に卵管・卵巣のつまりや癒着などが疑われる場合に行われます。 全身麻酔下でへその下を1.5cmくらい切り、そこからガスを入れておなかをふくらませ、同じ穴から腹腔鏡(ふっくうきょう:胃カメラのようなもので、先端にカメラがついた細い管)を入れてモニターで観察します。鉗子(かんし:はさむ器具)で臓器をつまんで動かしながら観察するので、鉗子を挿入するための穴も同時に開けます。
治療方法
大きく分けて薬で治療する方法と手術をする方法の2種類があります。
*薬物療法:対症療法(鎮痛薬で痛みをとる)
*薬物療法:ホルモン療法(女性ホルモンの分泌を抑え、病巣を小さくし妊娠率を上げる)
*薬物療法:(GnRHアナログ、ダナゾール)
*手術療法:保存的手術(腹腔鏡で病巣をレーザーメスや電気メスで焼き切る)
*手術療法:根治手術(子宮・卵巣を含めて病巣を取り出す)
それぞれの治療法は内膜症の程度や患者さんの状態によって向き・不向きがありますので、患者さんとお医者さんが相談してどの治療法を選択するか決定します。 手術をすすめられたらお医者さんに積極的に質問して、「なぜ手術が必要なのか、どんな手術をするのか、手術後はどうなるのか」など、よく理解して、納得して受けるようにしましょう。
生活上での注意(気をつけて!)
子宮内膜症は非常に再発しやすい病気です。 ホルモン療法をした患者さんも、治療後 は2〜3ヶ月に1回は受診して経過を観察する必要があります。再発したらまた治療が始まるわけですが、子宮内膜症の治療には長い時間がかかる場合が少なくありません。患者さん自身が治療に前向きになることと、治療にあたって頂いているお医者さんと何でも話し合えるような信頼関係が大切です。 病気のことばかり深く考え込んでしまわず、前向きに生活を送りましょう。 予防に確実な方法はまだ分かっていませんが、適度な運動は子宮内膜症の発症を予防するのに効果があるとも言われています。

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